『恋におちたシェイクスピア』

2018年09月16日

 京都劇場で劇団四季の『恋におちたシェイクスピア』を観てきました。昨年末に行った『オペラ座の怪人』以来、人生二度目の劇団四季です。


「恋におちたシェイクスピア」は、題名の通り、俳優であり劇作家であり詩人でもある若き日のウィリアム・シェイクスピアを主人公に据え、彼があの『ロミオとジュリエット』を書き上げるまでの、笑いあり剣戟あり涙ありの一大騒動を描いた物語です。詳しいストーリーや登場人物などは、劇団四季の公式HPをご確認下さい。

 お芝居自体は三時間近くあるのですが、さすが劇団四季ですね、軽妙な遣り取りが続くので見入っていると物語は矢のように進み、あっと云う間にカーテンコールです。

 紆余曲折こそあれ、最後はみんな幸せな結末を迎えます。しかし、劇作家として大成功し、早速次の作品に取り掛かるシェイクスピアの目からは、どういう訳か大粒の涙が。止めどなく溢れる涙で頬を濡らしながら、それでもシェイクスピアは、何かに取り憑かれたように羽ペンを走らせ続け、そして閉幕――。誰もが笑顔の大団円のなか、「書き続ける」ことを選んだシェイクスピアの喜びと哀しみ双方がさり気なく描かれた今作の幕切れは、屈折したハッピーエンド至上主義者である伊吹亜門的には100点満点でした。イヤ、ほんとに素晴らしい。

 あと、これは完全に個人的な意見なのですが、終盤近くの或るシーンが完全に山田風太郎の明治モノでした。絶句しつつも思い返せば、確かにそれまであった一見意味の無さそうな台詞たちが、実はここに至るまでの伏線だった事に気付かされ、「ああちくしょうやりやがったなこの野郎」と、思わず立ち上がって拍手したくなるほど感動しました。だって、ミステリと思わずに読んでいた作品でミステリ的な仕掛けが見つかると、なんかこう嬉しくなるじゃないですか。全国一億二千万の山田風太郎ファンの皆さん、今すぐチケットを予約しましょう。

 この「恋におちたシェイクスピア」は、恋と創作の物語です。

 ものを書く人たちにとっては良い刺激とも、また致命的な猛毒ともなり得る作品だと思います。素晴らしい作品ですので、皆さんもぜひ劇場へ足をお運び下さい。