【新作告知】「攻撃!」

2022年07月19日

 大正12年、晩春。

 馴染みの新聞社から招かれてポツダムを訪れた小説家の那珂川二坊は、戦勝国の日本を嫌悪するドイツ人青年"博士"と、傲岸不遜を絵に描いたようなドイツ留学中の帝国陸軍軍人"大尉"との論争に巻き込まれる。

 一度は大尉の勢いに圧し負けた博士だったが、論題ともなった「日本の軍人が勇敢であるか否か」について、ポツダム郊外の屋敷で日本の退役陸軍中将——それも日露戦争の英雄と謳われた男——が割腹自殺を遂げたと思しき十年前の事件を引っ張り出してくる。

 中将の遺体からは、多量の睡眠薬が検出されていた。英雄と称えられた男ですら、死に臨んではこの有様だと嘲笑う博士に対し、「中将は殺されたのだ」と大尉は啖呵を切ってしまう。

 博士は驚きながらも、それならば証明してみせろと大尉に迫った。後へは引けなくなった大尉、そして何故か共に行動することになった那珂川は、早速中将の怪死事件について調査を開始する——。



 小学館の月刊誌『Story Box』8月号に《帝国妖人伝》の新作「攻撃!」を寄稿しました(題名は「アングリフ!」と読みます)。

 明治・大正・昭和に活躍した偉人たちの妖しい顔をご紹介する《帝国妖人伝》。三人目の妖人は、有名な"あの軍人"です。

 校了直前、担当氏からは「伊吹さんが楽しんで書いている感じが伝わってきました」と云われたのですが、確かに本作は、僕がやりたかったことを存分にやらせて貰った感覚です。いやァ、楽しかった。

 お楽しみ頂ければ幸いです。