【新作告知】「黒樂茶碗 朧」

2024年05月27日

 天正十八年、秋。堺の港に停泊中の大安宅船にて伊予の水軍大名、丹下顕忠が殺された。

 顕忠は、関白秀吉が目論む唐入りに際して水軍の先鋒を予定されていた。激怒した秀吉は堺政所、入舟清成に速やかな下手人の捕縛を命じる。

 現場を検分した堺番方、葦田弘貞。丹下家家老、泰寂院江州斎。顕忠の師として同船を訪れていた利休千宗易、兄弟子たる細川忠興と古田織部正。現場に居合わせた者どもの話を通して、清成は何とか事件の全貌を掴みかける。

 しかし、依然として大きな謎がひとつ残っていた。船内の茶室で見つかった骸の傍らでは、黒樂茶碗の「朧」が無惨に打ち砕かれていたのである。天下の名器と謳われた朧を、下手人は何ゆえ叩き割ったのか――。

 双葉社の月刊誌『小説推理』2024年7月号に「黒樂茶碗 朧」という短編を寄稿しました。

 平安時代の遣唐使船を舞台に据えた前作に引き続いて、今回は戦国時代の安宅船を選びました。関白秀吉が治めるこの時代だからこそ成立するミステリを目指しましたので、お楽しみ頂ければ幸いです。