新装開店
大変ご無沙汰しております。
毎回冒頭で謝っている気もしますが、弊《酒樽奇談》が完全に開店休業中で誠に申し訳ありません。
先月、鮎川賞・ミステリーズ!新人賞の授賞式のために上京した時、或る方から「折角やっているんだから、告知以外にも何か発信した方がいいよ。その方が、伊吹亜門がどんな人なのかも分かるでしょう?」という大変ありがたい助言を頂きました。
最初の頃は観劇の感想とかもちらほら載せていましたが、最近は専ら掲載告知ばかりで、しかも遅筆の新米兼業作家ときているんだから告知自体そう多くはありません。結果的に告知だけだと更新も限られてくるという塩梅です。
これではいけない!(毎回云ってる気もしますが)ということで、これからは少なくとも月一は更新するようにします(これも毎回云っている気がしますね)。
二足の草鞋でえっちらおっちら歩く人生ですので、幸か不幸か色々と刺激の多い毎日ではあります。
当然昼の仕事のことは書けませんが、それ以外でも読んだ本の感想や、行ったお店の紹介、あと伊吹亜門は三度の飯より怖い話が好きなので、そこら辺をつらつら書いていけばまァ月一更新ぐらいは何とかなるだろうと思っています。
という訳で、新装開店した《酒樽奇談》をどうぞよろしくお願いします。
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折角なので最近聴いた怖い――というか、妙な話でも一つ。
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京都に引っ越してきたばかりのQさんは、荷ほどきも一段落した或る休日、新居の周りを散策してみることにした。
Qさんが越してきたのは、辺鄙というほどではないけれど、中心街からは外れた、少し歩けば山に入るような場所だった。
国道に沿ってゆっくり登って行くと、やはり進むに連れて人家の数はまばらになってくる。家は建っていたとしても、庭には草木が生い茂り、壁も崩れているような、到底人が住んでいるとは思えない物ばかりだった。
そんな荒ら屋の一つに、Qさんは奇妙な物を見つけた。
表札も剥がされた石造りの門は、チェーンで固く鎖されている。向こうに臨む家屋の外壁もぼろぼろに崩れ、やはり人の住まう様子は見られない。
ただ、玄関の脇にある黒い傘立てには、まだ真新しい子ども用の赤い雨傘が三本差してあった。
そのちぐはぐな感じが何となく気味悪く、Qさんは足早にその場から立ち去った。