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取材のため、京都と奈良の県境に位置する法螺吹峠を訪れていた探偵小説家の那珂川二坊は、吹き荒ぶ雷雨のなか、峠の茶屋近くの泥濘で田舎紳士の死体を発見する。

「あたしもそういう考えだったのよ。こんなことになるまではね。あんた、自分は社会改良家だとでも思ってるの?」

雇われ文士の那珂川二坊は頭を抱えていた。『万朝報』に寄せねばならない実録記事が、未だ文章は疎か、題材すら見つけられずにいたのだ。

雨と短銃/Apocrypha

2021年05月01日

蕭々と雨の降りしきる、どこかまだ涼やかな初夏の昼下がりだった。

※今回の酒樽奇談では、デヴィッド・スーシェ主演のテレビシリーズ『名探偵ポワロ』第24話「スズメバチの巣」の真相に言及している箇所があります。未視聴の方はご注意下さい。

とく暮れよ

2020年12月31日

先日、再放送のコント番組を観ていて慄然とすることがありました。幾人もの芸人がわーっと集まるシーンに、自ずと「こんなの流したら視聴者から『密だ!』って怒られるんじゃないか?」と思ってしまっていたのです。気が付かない内に、意識はそこまで変わっていました。恐ろしいことです。

だからペンを持つ

2020年12月22日

何年前だったかは忘れたが、当時の私はまだ学生時代から引き続いて、晴明神社に近い今出川のアパートに住んでいた。